Point
本計画は、東京都の郊外に計画した建設費坪60万円で実現したローコスト住宅の計画です。住宅を設計する上で、とにかく無駄なものをつくらない、というスタンスから平面的には仕切りを設けない、ワンルームをベースにした空間構成を実践しました。また、住宅の入口は、いわゆる玄関としてではなく、南側の主採光面全面を土間として設け、かつての農村住宅のような入り口として設えています。このような平面的にシームレスな操作をする一方で、吹き抜けになった階段や仕上の木材が露出する天井、高さが変化する勾配天井や子供がワクワクするロフト等、天井の仕上や高さを切り替えることによって生活空間の領域性を生み出すことを試みています。低コストという制約に対する発想が結果的には、常に家族の声を感じる住まいを生むことになりました。また、外部とゆるやかにつながる土間には、近所の人が立ち寄って世間話やおすそ分け等が日常的に生まれ、小さいながらも地域コミュニティを醸成する住まいとして根付きはじめています。